相続法(民法)の改正① 「遺留分侵害額請求権」

2020/06/12 その他
相続法(民法)の改正① 「遺留分侵害額請求権」

民法の改正により、約40年ぶりに相続に関するルールが大きく変わりました。
今回は改正事項の中で、「遺留分侵害額請求権」について確認していきます。

(2019年1月13日から段階的に施行)

遺留分侵害額請求権とは

遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人に保障されている相続財産の一定の割合です。
今回の改正により、遺留分を侵害された相続人は、被相続人から遺贈又は贈与を受けた者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭を請求することができるようになりました。この権利を、「遺留分侵害額請求権」といいます。
遺留分及び遺留分侵害額については下記の計算式により算定します。

 

旧法下「遺留分減殺請求権」との違い

これまでは遺留分権利者が有する権利は「遺留分減殺請求権」でしたが、改正により内容と名称が改められ、「遺留分侵害額請求権」となりました。(2019年7月1日から施工)

旧法下の「遺留分減殺請求権」は、贈与や遺贈を受けた財産そのものが返還される「現物返還」が原則でした。相続財産は共有財産となり、侵害分に相当する持ち分が返還されます。そのため、不動産などが共有状態になり、有効な活用ができないなどの弊害がありました。
金銭での支払いは例外的な扱いであり、遺留分権利者側からは金銭による支払いを求めることはできませんでした。

改正後の「遺留分侵害額請求権」では、遺留分の請求は金銭によるものとして統一されました。これにより相続財産の共有化が防がれ、各財産の有効な活用がしやすくなったと言えます。
なお、遺留分侵害額請求を受けた側からの申し立てにより、裁判所が金銭債務の支払いにつき相当の猶予を許与する制度も新設されました。

 

遺留分侵害額請求権の時効

「遺留分侵害額請求権」は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。

これは相続開始の時から10年を経過したときも同様です。

 

※執筆時点で有効

執筆者

萩原岳 プロフィール

東京外国語大学中国語学科卒業
株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役
http://apre-kanntei.com/
不動産鑑定士 MRICS(英国不動産鑑定士)

 在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。

 相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産事業者など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。

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