台湾の不動産事情

2026/03/11 その他
台湾の不動産事情

台湾の不動産市場は、東アジアの中でも極めて特殊な成熟を見せています。
国内投資家にとってアセットリロケーションとしての側面が強く、日本人が参入する上での主要なトピックは以下の通りです。

 

土地制度と所有権

• 完全所有権の認可: 日本人は台湾において、建物だけでなく土地の「所有権」も取得可能。これは多くのアジア諸国が「借地権」のみであるのと対照的。

• 相互主義の原則: 台湾の土地法第18条に基づき、日本人が台湾で不動産を取得できるのは、相互主義(台湾人も日本の不動産を取得できる)という信頼関係に基づいている。

 

市場の特性と利回り

• 低利回りの常態化: 台北市などの主要都市では、表面利回りが2%前後、実質利回りが1.5%を下回ることも珍しくない。インカムゲイン(家賃収入)目的の投資には不向き。

• キャピタルゲイン重視: 土地が限られているため地価が下がりにくく、過去数十年にわたり右肩上がりの推移を見せてきた。資産の保全や、将来的な転売益を狙う投資が主流。

• 高い流動性: 中古住宅市場が非常に活発であり、適切な価格設定であれば売却の出口戦略を描きやすい。

• 地政士の役割: 台湾には「地政士」という国家資格があり、日本における司法書士、土地家屋調査士、一部税理士の業務を兼ねる不動産取引の専門国家資格です。地政士は不動産登記、土地測量、契約作成、税務申告を代理し、台湾の不動産売買や相続手続き(戸籍謄本取得等)において不可欠な存在。

 

エリア別の動向

• 台北市・新北市: 政治・経済の中心地。価格は高止まりしているが、資産価値の安定性は抜群。

• 台中市: 人口流入が続いており、新興開発エリアの拡大が著しい。

• 高雄市: TSMC(半導体受託製造の世界最大手)の工場進出に伴い、不動産価格が急騰。現在、最も注目されているエリアの一つ。

 

実務的な障壁

• 融資の難易度: 台湾に居住権(ARC)を持たない日本人が現地の銀行から融資を受けるのは非常に困難。原則としてフルキャッシュ(現金一括)での購入が前提となる。

• 房地合一税: 短期転売を抑制するための税制。5年以内の売却には高い税率(最大45%)が課されるため、中長期の保有が基本。

 

台湾の築年数に関する特徴

• 築30〜50年が「現役バリバリ」の市場: 台北市などの都市部では、住宅の7割以上が築30年を超えている。日本では築30年を過ぎると建物の価値はゼロに近づくが、台湾では利便性の良いエリアであれば、築古の「老公寓(エレベーターなしアパート)」でも高値で取引される。

• 「外観」と「内装」のギャップ: 外観はコンクリートが黒ずんでいたり、室外機や鉄格子が乱雑に見えたりする物件が多いが、室内はリノベーションで新築のように綺麗にされているケースが一般的。台湾では「内装を自分好みに作り替えて長く住む」文化が定着している。

• 「都市更新(再開発)」への期待値: 築40〜50年の物件が好まれる理由の一つに、将来的な建て替え(再開発)への期待がある。再開発が決まれば、古くて狭い部屋が最新のタワーマンションに化ける可能性があるため、投資家があえて築古を狙うこともある。

• RC造(鉄筋コンクリート)が主流: 日本のような木造住宅はほとんどなく、ほぼ全ての建物がRC造またはSRC造。そのため耐用年数が長く、築年数が経過しても構造的な信頼性が高いと考えられている。

• 管理状態の二極化: 築浅のマンション(大樓)は24時間警備員付きで共用施設も充実しているが、築古のアパート(公寓)は管理組合がないことも多く、ゴミ出しを自分で収集車まで持っていく必要があるなど、築年数によってライフスタイルが大きく異なる。

 

まとめ

台湾の不動産投資は、モンゴルや東南アジアのような「ハイリスク・ハイリターン」を求める場所ではありません。むしろ「カントリーリスクを抑え、安定した法治国家に資産を逃がす(分散する)」という守りの投資に適しています。
実需が強く、所有権が担保されている点は、海外不動産投資における最大の安心材料と言えます。
ただし、日本の不動産よりも利回りが低く、築年数が古い傾向にあるため、年間収支についての詳細なシミュレーションが必須です。

 

 

執筆者

萩原岳 プロフィール

東京外国語大学中国語学科卒業
株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役
http://apre-kanntei.com/
不動産鑑定士 MRICS(英国不動産鑑定士)

 在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。

 相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産事業者など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。

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