相続法(民法)の改正③ 「預貯金の払戻し制度」

2020/07/01 その他
相続法(民法)の改正③ 「預貯金の払戻し制度」

民法の改正により、約40年ぶりに相続に関するルールが大きく変わりました。
今回は改正事項の中で、「預貯金の払戻し制度」について確認していきます。

(2019年7月1日から施行)

遺産の分割前に被相続人名義の預貯金が一部払戻し可能に

遺産分割が終わる前に、遺産分割の対象となる預貯金を一定の範囲で払戻しを受けることができるようになりました。

改正前では、相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることから、一度口座が凍結されると共同相続人による単独での払戻しができないこととされていました。
そのため、遺産分割が終了するまでは葬儀費用の支払いや相続債務の弁済などの資金需要があっても対応できませんでした。

このような相続人の資金需要に対応するため、預貯金債権について一定の範囲の金額内であれば、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口で払い戻すことができるという、「預貯金の払戻し制度」が設けられました。

改正後の2つの払戻し制度

①家庭裁判所の判断を経ずに払戻しが受けられる制度

預貯金債権のうち、一定額については家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口から単独での払戻しを受けられる制度
※ただし、1 つの金融機関からの払戻しの上限は150万円まで

単独で払戻しをすることができる額は以下の計算式で求められます。
相続開始時の預貯金債権の額 × 1/3 × 払戻しを行う共同相続人の法定相続分

 

②家庭裁判所の判断により払戻しができる制度 

相続債務の弁済のためなど仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。
(家事事件手続法の改正)

この制度は家庭裁判所が仮取得を認めた金額を金融機関から単独で払戻しを受けることができます。

 

制度の注意点など

●制度の利用には所定の書類が必要となります。

●仮払いを受けた金額については、すでに遺産を受けたものとして遺産分割の際に相続額から差し引かれます。

●遺言により、これらの制度を利用できない場合があります。

 

 

※執筆時点で有効

執筆者

萩原岳 プロフィール

東京外国語大学中国語学科卒業
株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役
http://apre-kanntei.com/
不動産鑑定士 MRICS(英国不動産鑑定士)

 在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。

 相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産事業者など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。

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