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1.相続対策の基本④
1-3.相続対策のデメリットと行動原則
〇分割対策のデメリット
・争族の原因となる
分割対策が適切に実行できれば相続争いを回避できます。しかしながら、推定相続人の意見を聞かず被相続人の独断で遺言書等を用意した場合、評価額の不均衡について説明を尽くしていない場合など、却って相続人間の不和を生じさせてしまう可能性があります。
・時価との乖離による不公平感
相続財産を相続税評価額もしくはその8割り戻しの金額で分割した場合、時価と乖離が生じることで、相続人間に不公平感が生じることがあります。一般的な居住用不動産であれば問題はありませんが、商業地、マンション適地、大規模画地、農地、底地、山林、郊外の土地等は相続税評価額が時価と乖離する傾向にあるため注意が必要です。
〇納税対策
・優良資産から手放していく
納税資金を手当てするため、売りやすい土地を確保することが多くあります。しかしながら、代が進むにつれて売れやすい土地=優良な土地は減っていき、次の世代には売りづらい厄介な不動産が残されてしまいます。なぜそうなるかといえば、相続発生後に焦って売ろうとするからであって、生前の内から底地など売りづらく時価が評価額よりも低い土地を時間をかけて処分することで、優良な土地を残すことができます。
・売却は絶対に必要か
納税資金のために土地を売却せざるをえない状況とは、現預金が税額に満たないからです。あらかじめ、例えば貸家の建物を推定相続人に移すことで現金収入も移転させ、納税資金をためておく作業が有効です。また、節税対策の結果、納税額が当初よりも削減でき、結果として売却を免れることもあります。
〇節税対策
・通達等の変更
節税対策が有効なのはあくまで着手当時の税制に限られます。税制もしくは財産評価基本通達等の変更により、せっかく手掛けた対策が無効となる可能性もあります。最近だと、広大地の評価減を適用するため、駐車場の一部に賃貸マンションを建ててしまい、結果として広大地規定が廃止された例があります。
・否認リスク
節税のためにタワーマンションを購入し、相続発生直後に売却したことで、租税回避行動だとして財産評価基本通達6項を適用された事例もあります。過度な対策は身を滅ぼすことになりかねませんので、周囲の専門家が客観的にアドバイスをする必要があります。
・「カモ」リスク
「畑を潰してアパートを建てると節税になる」というセールストークにのせられ、結果的にキャッシュが回らず相続発生前に土地を手放してしまうような話は珍しくありません。営業職は歩合のため、売るためには手段を選ばないこともあります。資産を守るためには所有者自らが学ばなければいけませんが、周囲の専門家が手助けすることもできます。
注記:執筆時点の税制等に基づきます。
また、本記事の内容は萩原岳不動産鑑定士による研修「鑑定評価を使った相続対策」のテキストを抜粋して掲載しております。本研修は口頭及びホワイトボード等を用いた追記情報が多数ございます。