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行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨②
3.評価通達に定められた評価方式が相続により取得した財産の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであると認められるか
本件通達は、その前段で、私道の用に供されている宅地の価額は、評価通達11《評価の方式》から21-2《倍率方式による評価》までの定めにより計算した価額の100分の30に相当する価額によって評価する旨を定め、その後段で、この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない旨を定めています。
本件通達は、一般に、私道がその接する宅地と一体不可分の関係にあるものとして利用及び取引がされており、その接する宅地の効用に寄与することによって、私道自体の効用が認められるものであり、私道そのものの効用としては、①オープンスペース(日照や通風を確保する空間等)としての効用、②一時的な占有(花壇を造る、ゴミ箱を置くなど)、③駐車スペースとしての利用などが考えられ、④担保権設定(抵当権等)や地役権の設定、⑤状況によっては私道から建物の敷地等への用途変更もそれぞれ可能ですが、その一方で、建築基準法や道路交通法の適用を受ける私道については、それぞれに定める私権の制限を受けることとなるなど、私道には、通常の宅地や路地状敷地に比べて低いものの、一定の価値があると認められますが、それは必ずしも一定の水準にあるものではなく、私道のもつ効用の程度等により幅の広いものとなっていることを前提に、私道の用に供されている宅地の評価に当たり、その私道を、①不特定多数の者の通行の用に供するいわゆる通り抜け道路と、②袋小路のように専ら特定の者の通行に供するいわゆる行き止まり道路とに分け、①に該当するものは、私有物としての利用が大きく制限され、公共性も強くなり、私道を廃止して宅地となる可能性は極めて小さくなるので評価せず、②に該当するものについては、ある程度の制約はあるが、私有物としての使用収益は可能であり、特に、そのような私道に接する宅地が同一人の所有に帰属することになると、私道はがその接する宅地内に包含されて宅地となる可能性があることから、宅地として評価した価額の100分の30に相当する価額によって評価することとしたものです。
そして、私道の用に供されている宅地が本件通達の前段の定めに該当する場合の評価割合については、「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(平成11年7月19日付け課評2-12ほか)による改正前の本件通達が100分の60としていたところ、社会情勢の変化に伴い、当時の経済情勢や土地の取引実態も踏まえて100分の30に引き下げられたものです。なお、土地価格比準表(国土交通省土地・水資源局地価調査課が監修し、地価調査研究会が編著をしており、現在までに六次の改訂がなされています。地価公示、都道府県地価調査等における比準表として使用される)では、路地状部分の減価率を30~50%、共用私道の減価率を50~80%、準公道的私道の減価率を80%以上としています。
以上の通り、本件通達が定められた趣旨、私道の用に供されている宅地が本件通達の前段の定めに該当する場合の評価割合が100分の30に引き下げられた経緯に加え、「他の公的評価基準」であるといえる土地価格比準表における減価率に照らすと、本件通達に定められた評価方式は、相続により取得した財産の取得の時における時価を算定するための手法として、合理的であると認められます。
行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨①
行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨③