行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨④

2018/08/24 判例・裁決事例
行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨④

5.本件私道について評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるか

本件において、原告は、本件私道の時価は、原告が依頼した不動産鑑定評価書に記載された評価額150万円を超えることはなく、本件私道について、評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情がある旨を主張します。しかしながら、原告依頼の不動産鑑定評価書による本件私道の評価を根拠に、本件私道について、評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情を認めることはできず、また、上記主張以外に、本件私道について、評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情を認めるに足りる証拠はありません。

 

6.本件私道の価額について

以上のとおり、本件私道の価額を本件通達を含む評価通達に定められた評価方式によって評価したものとすることは、相続税法22条の規定の許容するところであり、本件私道は、本件通達の定めに基づいて評価されるべきものといえます。

 

7.コメント

本件は、不動産評価の観点からみれば原告側の主張に合理性があり、裁判所の判断は適切とはいえません。不動産評価以外の論点について、判断に影響を及ぼしたものと推測されます。

 

執筆者

萩原岳 プロフィール

東京外国語大学中国語学科卒業
株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役
http://apre-kanntei.com/
不動産鑑定士 MRICS(英国不動産鑑定士)

 在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。

 相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産事業者など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。

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