行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨③

2018/08/23 判例・裁決事例
行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨③

4.本件私道が本件通達の前段の定めに基づいて評価されるべきものか

本件私道は、その一方の端(東側)において区道に接続し、他方の端(西側)において被相続人の親族が所有する隣接通路に接続しており、「本件私道と隣接通路とを併せて区道に接続するいわゆる行き止まり道路を構成する」ものです。

そして、本件私道は、区道及び隣接通路のほか、いずれも宅地に接しているところ、本件私道の南側の宅地から本件私道には直接に出入りすることができず、そのほかの宅地上には、本件相続の開始した日において、共同住宅であるF建物からH建物までが存しており、また、隣接通路は、本件私道のほか、いずれも宅地に接しているところ、本件私道の南側の宅地から本件私道には直接に出入りすることができず、そのほかの宅地上には、本件相続の開始した日において、戸建住宅又は共同住宅であるA建物からE建物までが存していました。

さらに、隣接通路に接する宅地上のA建物は、「平成18年月日不詳」を登記の原因の日付として、その種類を「居宅診療所」から「居宅」に変更する旨の表題部の変更の登記がされており、また、本件私道及び隣接通路に接する宅地上には、公園、集会所、地域センターなどの公共的な施設等は存しません。

上記の各事実によると、本件私道は、いわゆる行き止まり道路の一部であるところ、本件相続の開始した日において、本件私道を利用する者は、本件私道及び隣接通路に接する宅地上に存するA建物からH建物までを出入りする者に限られ、しかも、これらの建物はいずれも戸建住宅又は共同住宅であって、これらの建物を出入りする者は、そこに居住する者又はその関係者に限られるものと認められます。

そうすると、本件私道は、位置指定道路を含むものではありますが、その現実の状況に照らすと、不特定多数の者の通行の用に供されているものではなく、本件通達の前段の定めに基づいて評価されるべきものであるというべきです。

 

行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨①

行き止まり私道評価事件(東京地判平成26年10月15日)Ⅱ.判旨②

 

執筆者

萩原岳 プロフィール

東京外国語大学中国語学科卒業
株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役
http://apre-kanntei.com/
不動産鑑定士 MRICS(英国不動産鑑定士)

 在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。

 相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産事業者など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。

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