マンション敷地事件(東京地裁平成25年12月13日判決)Ⅱ判旨②

2018/08/29 判例・裁決事例
マンション敷地事件(東京地裁平成25年12月13日判決)Ⅱ判旨②

2. 評価通達に定められた評価方式が贈与により取得した財産の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであると認められるか

(1) 評価通達の定め
(中略)
評価通達においては、区分所有に係る財産の各部分の価額については、評価通達の定めによって評価したその財産の価額を基とし、各部分の使用収益等の状況を勘案して計算した各部分に対応する価額によって評価するものとされています(評価通達3)。

(2) 評価通達に定められた評価方式の合理性
ア. 評価方式に定められた評価方式は、宅地及び家屋の時価を算定するための手法としての一般的な合理性に疑いを差し挟む余地は特段見当たりません。

イ. これに対し、原告は、評価通達にはマンションの敷地に関する固有の評価方法が定められていないことから、その使用、収益、処分に大きな制約があるマンションの敷地であっても更地と同視され、路線価方式によりその価額が評価されることになるところ、マンションの実際の取引価格は、専有部分の床面積、築年数、設備内容等の建物の現状を重要な要素として決定されているから、敷地の価額を路線価方式により評価してマンションの価額を算定したとしても、マンションの時価を表すことにはなるとは限らず、とりわけ老朽化が進んで取引価格が下落したマンションでは、路線価方式による敷地の評価額がマンションの時価を大きく上回るという現象が容易に生じ得るなどとして、評価通達に定められた評価方式はマンションの価額を算定するための手法として不合理であると主張します。

しかし、評価通達が区分所有に係る財産の各部分の価額の評価に関する定め(評価通達3)を置いていることからすれば、(中略)宅地及び家屋の時価を算定するための手法としてその合理性に疑いを差し挟む余地の認められない評価通達に定められた評価方式がおよそ一般的にマンションの価額を算定するための手法として不合理であるということは、適当ではなく、原告の指摘するような問題は、個別の事案ごとに、評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるかどうかを判断するに当たって斟酌されることになるものというべきです。

 

執筆者

萩原岳 プロフィール

東京外国語大学中国語学科卒業
株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役
http://apre-kanntei.com/
不動産鑑定士 MRICS(英国不動産鑑定士)

 在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。

 相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産事業者など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。

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